猫と立川

かねてから梅雨の晴れ間という予報だったので、今日は中野のブックファーストで単行本を二冊買ってから中央線に飛び乗り、立川まで出かけた。目的はペットショップ巡りだ。

三鷹を過ぎたあたりからどことなく車窓から見える車道も広々としてきて、家々の庭も優秀な専業主婦によってキラッとよく手入れされているように姿を変えつつあったが、立川までくるともうここは一つの「地方都市 = 地方の県庁所在地」だなという感想を持った。

改札を出るとでっかい駅ビルの内部で、南北の出口までが大通りみたいに開けている。モノレールに乗り換えるために北口側を出ると、そこは地上からすると二階の位置にある空中遊歩道であり伊勢丹などのデパートに接続されている。ぼくはこれと同じような景色を仙台駅や宇都宮駅や大宮駅で見た記憶がある。デジャブ、デジャビュ

人がたくさんいるのは都心と同じだが、中高生や大学生の比率が高いところがすごくいい。都心は意外と(若ぶった)大人ばっかりで、高校生なんかを見かけるのは結構レアである。コロナナントカで登校事情がどうなっているか知らないけど、やっぱり街に若い人が多いのはいい。

モノレールで立飛駅まで行って、「ららぽーと」を訪れたんだけど、男子高校生のクソガキ集団が、入り口に置かれた体温計(額に向けるやつ)をお互いに向けてワイワイガヤガヤと検温しまくってて最高に微笑ましかった。ああいうクソガキ集団は都心にはなかなかいない。立川が地方である例証だなとぼくは感じた。

女子高校生というのを見る機会も普段はなかなかない。「ららぽーと」の帰りに立川北駅でモノレールから降りたときに前を歩いていたすらりとした女子高校生は「あいみょん」みたいなブラックロングヘアの毛先だけくしゅっとカールさせてすごく垢抜けているんだけど、「OUTDOOR」というスポーツ系ブランドの黒いリュックを「がさっ」という感じでクールに着こなしていて、そのシンプルでクリーンなテイストがいかにもいまどきだなーと思っていると(ひと昔前なら「キツイ」と言われかねないような目元が赤く滲んだ最近のメイクもぼくは好きだ)、改札の前で待っていた友だちの集団を見つけた途端、「ザ・女子高生」みたいな叫声を上げて走り寄って抱きついた。
やっぱり街に若い人が多いのはいい。ぼくはそう思う。

ららぽーと」も良かったけど(ドバイモールを筆頭に旅先で訪れたショッピングモールたちを思い出させた)帰り際に寄った、ジョーカーというペットショップが入っている「GREEN SPRINGS」は稀に見る美しいショッピング施設だった。ヨーロッパの街並みにも引けを取らない「GREEN SPRINGS」は緑と水、あずまやとコーヒーショップが絶妙な開放感と目隠し感のバランスで配置され、いちショッピング施設というよりも、優れた都市計画が産み出した未来都市のひとつのモデルであるように感じた。立川という街は、かつては米軍基地のあるダークな印象が強い街だったようだが、いまは都内でも有数の住み良い街なのかもしれない。

意識してペットショップを巡ったのは今日がはじめて。実はぼくは猫を飼いたいと思っているんだけど、今日の成果からするとなかなか前途は多難である。犬や猫はどうしてあんなに高いのだろう? うん十万はくだらない。そんな金があるかないかというよりも、ひとつの命に値段がつけられているということに、まずぼくが咀嚼しなければならない課題がある。血統によって、健康状態によって、そして容姿によって、犬や猫に値段が付けられている。可愛い子を、血筋の良い子を、五体満足の子を買うために、高いお金を払う。その行為についてなにも思うところなく「前提」として受け入れてしまうことは少なくともぼくにはできない。その点、同じペットショップにいたカメレオンなんかはカワイイもブサイクもないので(あるのかもしれないけどさ)、心を無にしていつまでも見つめ続けられる気がした。